カテゴリー別アーカイブ: 新聞(共通)

「あすかルビー」はタルトにピッタリ 自家産と県内産で菓子販売

美馬町 逢坂京子さん
__「調理師専門学校に入ろうかと悩んでいたくらい、子どものころからお菓子作りをしてみたい気持ちがあった」と話すのは、美馬町で「シフォン工房 京〈みやこ〉」を営む逢坂京子さん。
__37年勤めた銀行を早期退職し、2017年3月にシフォンケーキの販売を始めた。メニューには、プレーンのほか自家産の野菜を使ったカボチャやホウレンソウのシフォンケーキを用意。「高温多湿になる夏場は、どんなに工夫してもシフォンケーキがうまく焼けない」という。納得できる商品ができない7~9月は、シフォンケーキの販売を休止する。
__このため一年を通じて作ることができるタルトが人気になった。「いちごタルト」には、銀行員時代の客だった徳島県内のイチゴ農家から仕入れた「あすかルビー」を使用。「果肉を切ったときの断面が美しいあすかルビーは、タルトに最適」と笑顔で話す。
今は予約販売だけだが、「将来は店頭で商品を提供できるようにしたい」と夢が膨らむ。

写真説明上=看板商品のシフォンケーキの出来栄えを確認する逢坂さん
写真説明下=あすかルビーが映える「いちごタルト」

醸造後の資源を有効利用 循環農業のロールモデルに

徳島県上勝町  池添 亜希さん
__上勝町のクラフトビール醸造場「RISE&WIN Brewing Co.(ライズアンドウィンブルーイングカンパニー)」に勤める池添亜希さんは、醸造工程で発生する麦汁搾汁後のモルトかすを使って、2021年の冬にビール用の麦作りを始めた。
__同醸造場では年間6万㍑のビールを醸造する過程で、約2㌧のモルトかすが排出される。菓子やグラノーラへの再利用や地元農家の協力で発酵堆肥としてすべて活用し、町の理念であるごみゼロに積極的に取り組む。
__しかし、大量のモルトかすを運ぶ労力、発酵堆肥になるまでに要する期間の課題に直面し、解決策を6年間模索していた。
__転機は21年の夏、微生物の力で液体肥料になる機械の導入。工場から外部に運び出すことなく24時間で液体肥料となり、以前から課題となっていた労力と時間の削減に成功した。多種多様な菌やアミノ酸が豊富に含まれていることが検査会社の成分分析で判明し、野菜作りに活用した地元農家からは「いつもより甘くてえぐ味が少ない」と反響があった。
__池添さんは循環農業のロールモデル(行動や考え方の模範)の実現のため、液体肥料を活用したビール用麦や野菜を作る。
__「麦作りは初めてで、土地を開墾するところから液体肥料のまき方、種まきなど農業の基礎から地元の農家さんに教わっています。知り合いの農家さんへの相談で、また別の農家さんとの出会いにもなり、私たちの活動がいろんな方の交流の場となってくれるのはうれしいです。まずは麦が無事に収穫できることを目標にしています」と話してくれた。

写真説明=ビールに合わせた3種の麦を栽培する圃場で「畑地に向いていなかったこの土地も、液体肥料で土がふかふかになったんですよ」と池添さん

コロナ禍 従業員の大切さ痛感 安心して働ける農園に

上板町 四宮慎一郎さん
__今年2月、上板町に設立された「株式会社四宮農園」では、代表の四宮慎一郎〈しのみや・しんいちろう〉さんと弟の裕平〈ゆうへい〉さん、従業員4人で、ブロッコリーのほか3品目を栽培する。
__コロナ禍の影響は、野菜の値崩れや消費量低下よりも働き手の不足が深刻だという慎一郎さん。「外国人技能実習生の受け入れが難しくなっている今、従業員の大切さを痛感しました」と話す。
農業求人サイトあぐりナビを通して、今年4月から新卒正社員を1人雇用することが決まった。「従業員全員が安心して働くことができる職場をつくりたい、自分にはその責任がある」という思いから、福利厚生を充実させるために法人化を決意したという。
__「自分にとって農業は天職。寒い朝の収穫がつらいときはありますが、味や形のいい野菜を出荷できたときは、とても充実した気持ちになれます」と慎一郎さん。
__兼業農家だった両親から農地を引き継いで24歳で就農し、休みなく働いてきた10年を思い返し、「今後は子供と過ごす時間をもっと増やしたいですね」と笑顔で話す。

写真説明=「今年のブロッコリーは小さいですがおいしいですよ」と慎一郎さん

オリジナルブランド「うずしおベリー」 海由来の肥料を活用

鳴門市 フルーツガーデンやまがた
__鳴門市大津町の株式会社フルーツガーデンやまがたの代表・山形文吾〈やまがた・ぶんご〉さんは、農園で栽培するイチゴを「うずしおベリー」と名付けたオリジナルブランドで販売する。
__安全・安心でおいしいイチゴを作ろうと、長年の経験で培った技術を生かし、海に面した同市ならではの海由来の肥料(天然5種類の海藻エキスとカキパウダーなど)を使う。
__栽培する品種は「紅ほっぺ」。「手間をかければかけるだけ甘く、たくさんの実ができる」と山形さん。「売り切れないほどの収穫量が、観光農園を始めるきかっけになった」と事業拡大のきっかけを話す。
__現在は、イチゴやナシの生産・販売と卸、観光農園のほかにも、イチゴ栽培のコンサルタントなど精力的に取り組む。
__「次にチャレンジしてみたいのがブドウ栽培。ブドウ栽培が可能になれば観光農園を一年通して開園できるメリットがある」と、将来のビジョンに目を輝かせる。

写真説明=うずしおベリーを手に「うちの自慢のこだわりイチゴです」と山形さん

〈収入保険 私の選択〉 徳島県那賀町  岩代 義正さん

少しでも長く農業続けたい
▽いわしろ・よしまさ▽ハウスイチゴ6㌃、水稲35㌃
__母と2人で、イチゴ「さちのか」と水稲を栽培しています。生産のメインのイチゴ栽培は父の代に始めました。始めた当初は出荷先の確保や選定にとても苦労したようでした。
__私がイチゴ栽培を始めて16年目になりますが、父世代の方々のおかげで、今は全量をJAアグリあなんに出荷することができています。
__収入保険には、制度開始の年から加入しています。鷲敷苺部会の仲間と相談して、「今まではJAや市場のおかげで単価は安定していた。しかし、今後はどのような状況になるか分からない」という意見が多かったので加入を決めました。
__1年のうちでも単価の波があります。出荷が高単価のときに当たればいいですが、低単価のときに出荷が増え、その年の販売金額が下がる心配があります。
__私自身はそれに加え、栽培管理がうまくいかなかった場合に、収量が減り販売金額が下がることを懸念して加入を決意しました。単価の下落だけではなく収量減少にも対応できる総合的な補償に魅力を感じています。
__定植直後に苗の生育不良が原因で収量減となり、販売金額が減少した年がありました。保険金を請求してすぐ受けられたので、重油などの経費支払いの助けになりました。
__5年前、川の堤防工事でハウスの移設を余儀なくされたときは、もう辞めようかと考えました。しかし、現在の場所へ再建し、栽培を続ける決意をしたときの母の喜んだ顔を見ると、少しは親孝行できたかなとうれしく思っています。
__異常気象といわれて久しいですが、10月の高温や今までにない長雨に対応するのは容易ではありません。異常気象に対応するのは難しくても、今の規模を維持し、少しでも長く母と農業を続けられたらいいなと思っています。

〈特集〉魅力ある農業へ 徳島県吉野川市 金子 美佳さん

農業の世界で活躍している女性たちに、就農からの取り組み、今後の目標などを話していただきました。

子育て世代で青ネギ生産
未来永劫の地域農業に
徳島県吉野川市 金子 美佳〈かねこ・みか〉さん
__吉野川沿いに位置する吉野川市鴨島町で新規就農して10年目です。現在は、5年前に独立し開業した「ねっこ農園」で、夫(克浩〈かつひろ〉さん)とパート5人と共に青ネギを栽培しています。
__以前は関東で会社勤めをしていましたが、自営願望があった夫と話し合い、二人とも食べることも体を動かすことも好きなので、せっかくなら農業を始めようと決意。ゆかりのある土地での新規就農を勧められ、2012年に私の地元徳島県に帰ってきました。
__農園の就労時間などの雇用条件が子育て世代とマッチしているので、来てくれているパートはママばかりです。家庭の事情や子どもの急な体調不良もみんなでカバーしあえるので、子育て中の私自身もとても助かっています。
__パートを雇い始めた当初は、楽しく和やかに作業しようと考えていましたが、今では目標を持って仕事に取り組むことも働く楽しみにしてくれているみたいで、一人一人がねっこ農園のプロのネギむき師としての役割を担ってくれています。
__卸業者のほかに、SNS(会員制交流サイト)やインターネット産直サイトで全国の個人のお客さまや飲食店の方にも購入いただいています。売り上げシェアとしては少ないですが、商品に対する反応や消費者がネギのどういうところを見ているのか、直接知ることができるとても貴重な場だと感じています。
__これからも小さな意見にも耳を傾けて、市場の需要を増やすような付加価値を見つけ、この地域で未来永劫〈えいごう〉営農を続けられるような会社をつくりたいですね。
▽青ネギ300㌃

写真説明=「手をかければそれに応えて成長してくれるんです」と話す美佳さん(左)と克浩さん

カリフローレ産地化目指す 阿波市 塩田 貴志さん・由嘉里さん

カリフローレ産地化目指す
元肥、防除を重視/営業拡充に意欲
徳島県阿波市 塩田貴志さん・由嘉里さん
カリフラワーの一種「カリフローレ」は、細長く伸びた茎のそれぞれに花蕾〈からい〉がつくため、まるで花束のような見た目になり、茎まで丸ごと食べられる。阿波市市場町の塩田貴志〈しおた・たかし〉さん、由嘉里〈ゆかり〉さん夫妻はカリフローレを栽培して5年目。以前はキヌサヤエンドウを栽培していたが、夫婦2人で営農をする中で手間や負担に悩み始めた際、農家仲間に声を掛けてもらったことをきっかけにカリフローレ栽培に転向したという。

「防除や収穫のタイミングも試行錯誤。知らぬ間に虫がついてしまい、たくさんダメにしてしまった悲しい経験も。白くきれいな花蕾を保つために、傷みがないか目を凝らして厳選しています」と貴志さん。
栽培で気を付けていることは「基本的な作り方はブロッコリーなどと変わりませんが、元肥をしっかりやることと防除は特に気を配るようにしています。畝間を管理機で空気を入れながら耕すようにすると、除草効果だけではなく吸水力や追肥の効き方も変わってきます」と話す。
由嘉里さんは「夏の暑いときに植え、台風などを乗り越えて収穫に至るので、大きくて立派な花蕾ができたときの喜びはひとしおです。『おいしくなぁれ』と心の中で唱えながら、職人や親のような気分で成長を願って世話をしています。小学生の子どもたちも出荷用の箱を折るなど、お手伝いをしてくれています」と笑顔で話す。
現在、塩田さん夫妻を合わせた市場町の生産農家4軒で、カリフローレの産地化を目指している。
貴志さんは「今はほとんど首都圏に出荷されているので、地元では目にしたことがない人が多いと思います。カリフローレの認知度を上げていきたいです。地産地消ができれば環境にも優しいですし、とくしまマルシェに出店するなど広報活動や営業にも挑戦してみたいですね」と意気込む。

写真説明=カリフローレを手に「花束のようですてきですよね」と塩田さん夫妻

農園の一押しはニンニクオイル 神山町 加藤宏行さん

季節の野菜と加工品提供
農園の一押しはニンニクオイル 神山町 加藤宏行さん

_「ここは神山町で日当たりが一番いい集落で、昔から陽の地と呼ばれていたそうです。阿波弁でお日様のことを『おひーさん』と呼ぶと知ったとき、音の響きのかわいさが気に入って農園の名前を決めました」と話すのは、おひーさんの農園チーノ代表の加藤宏行〈かとう・ひろゆき〉さん。
_同農園では、「無農薬炭素循環農法」でスダチやニンニクのほか、季節の野菜を約70㌃栽培する。旬のものを一番良い状態で提供したいと考え、農産物加工所「工房picocino」を今年開設した。
_特に力を入れているニンニクオイルは、農薬を使わず栽培したニンニクのチップスを、オーガニックオリーブオイルに漬け、香りとうま味が抜群な万能調味料で、同農園の一押し商品となっている。9年前に東京から移住してきた当初、農業の知識も経験もなく、試行錯誤の毎日だったという。その日々を踏まえ、「失敗があるから人は成長します。これからも自分たちがおいしいと思う商品で、買ってくれた人たちに喜んでもらいたいです」と話す。
▽問い合わせ先=おひーさんの農園チーノ(電話050・2024・3388)

写真説明=「ニンニクは国内だけではなく海外の品種も試作しています」と加藤さん

花きの品質向上を追求 那賀町 飯島 好さん

花きの品質向上を追求
徳島県那賀町  飯島 好〈いいじま・よしみ〉さん

__西日本有数のケイトウ産地・那賀町相生地区で花きの品質向上に取り組む飯島好さん。新規就農以降、先輩農業者に相談するほか、相生地区の同世代のケイトウ農家で結成したグループ「相花夢〈あいかむ〉」が月1回開く定例会で、情報交換を通して栽培技術を磨いている。

__スギ苗農家手伝いの経験から農業に魅力を感じ、自分でも農業をしてみたいと思っていた飯島さん。2018年に相生地区のケイトウ栽培新規営農希望者募集に応募したことが、花き農家になるきっかけとなった。
__「JAアグリあなんけいとう部会の方に栽培の知識やコツを聞き、教科書通りの栽培方法をしたら高品質のものができると思っていた。しかし、現実は教科書通りにいかないことばかりで、たくさんの失敗をしてきた。それぞれの圃場ごとに違う課題があり、それにあった対処をする必要があると学んだ」
__6㌃から始めたケイトウ栽培は、現在ではハウスと露地合わせて20㌃に拡大。出荷時以外は1人で作業するため、週1回の病害虫防除など手のかかることが多いという。しかし、手間を惜しむことなく品質向上に力を入れる。さらに、手間をかけることが結果的に作業の効率化につながっていると話す。
__「品質が上がると、単価が高くなる上に収量が安定することが分かった。さらに、出荷の際に等級ごとに分ける作業の手間が少なくなる。まだ生産は安定しているとはいえず、失敗して苗をだめにすることもあるが、その失敗を糧にしてこれからの栽培に生かしていきたい」
__現在はケイトウのほかシャクヤクや葉ボタン、菜の花を合計50㌃栽培する。葉ボタン、菜の花は昨年から出荷を始め、シャクヤクは今年から出荷する予定だ。_常に新しく挑戦できるものを探し、現在はハウスで栽培するケイトウの休耕期間を利用したヒマワリ栽培を検討している。今後の目標としては「その土地にあった新しい作物を探して、相生地区の活性化につなげたい」と意気込む。


写真説明=出荷前のケイトウを見回る飯島さん

〈特集:収入保険で備える〉 つなぎ融資を経費に充当

自然災害や病虫害などによる収穫量の減少だけではなく、農業者のけがや病気、新型コロナウイルス感染症の影響による販売価格の低下などで収入が減少した場合も補償対象になる収入保険制度。補償を受けた農業者に、加入のメリットや制度の魅力などについて聞きました。

コロナ禍、けが、資金繰り不安
つなぎ融資を経費に充当
徳島県鳴門市  北野 美紀さん
ハウススダチを親の代から栽培して40年になります。3月から6月まで収穫して、徳島北農協から主に京阪神、東京に出荷されます。
昨年のコロナ禍では、飲食店の営業自粛などの影響でスダチの需要が低下し、例年の4割ほど単価が下がりました。同じ年の5月には母親がけがをして、作業人数が減ったため収穫量が減少しました。経費の支払いの時期で資金繰りの不安があったため、つなぎ融資を申請しました。
申請は、NOSAI職員に価格低下幅や収穫量を伝えるくらいで、難しい手続きはありませんでした。資金が必要な時期までにつなぎ融資を受けられたので、ハウスを加温するためのガス代やビニール代の支払いに充てることができました。無利子で受けられるところが農家としてとても助かるポイントですね。
農業大学校の同級生だったNOSAI職員の勧めがあり、お付き合い程度の気持ちで加入をしたところ、予想に反して初年から保険金を受け取ることになりました。
今年3月には私が作業中にけがをしてしまい、2週間ほど入院しました。3月はハウススダチの単価が一番高い時期なので、今年の収入でも減少を見込んでいます。
自然災害や施設の故障、けがなど、予測できない事態はたくさんあると実感しています。幅広いリスクに備えられるので、収入保険に加入していて本当に良かったと思っています。
▽ハウススダチ36㌃

写真説明=「予期せぬことを予測して備えることが、大切だと感じています」と北野さん