カテゴリー別アーカイブ: 農業共済新聞

農業共済新聞(1月)を掲載しました

〈特集〉私の登竜門

障がい者の就労支える
徳島県阿波市  宮田 大貴〈みやた・たいき〉さん(26)

「障がいのある弟と一緒に働く場所をつくりたい」という思いがきっかけで、父の地元の阿波市で2020年に農業を始めました。
考えに賛同してくれた大学時代の仲間3人と、農業知識ゼロの状態からスタートしたので、土地の整備やハウスの建設など挑戦続きの4年間でした。
イチゴ栽培の師匠や地域の方の支えがあったおかげで、ハウスイチゴをはじめ原木シイタケも拡大しました。
イチゴをメイン作物に選んだ理由は、作業の種類が多いからです。同じような障がいでも、十人十色の特性があります。作業の種類が多いからこそ、それぞれの特性に合った作業を見つけられるのではないかと考えました。
目標は、NPO法人の設立と、研修生の受け入れや研修が修了した後に従業員として雇用することです。老若男女、障がいの有無を問わず、集い楽しめる場所をつくり、働きに来るのが楽しみになるような環境を整えたいです。

「収穫期以外はキッチンカーで販売しています。イチゴのスイーツのほかにラーメンもあるので、甘みが苦手な方にも楽しんでもらいたいです」と宮田さん

農業共済新聞(11月)を掲載しました

加工用キャベツ契約栽培
大玉で安定経営目指す
徳島市 佐野友彦さん

_徳島市で野沢菜やカリフラワーなど多品目の露地野菜を栽培する佐野友彦さん(46)は、ブロッコリー200㌃を加工用キャベツの契約栽培200㌃へと中心作物の転換に取り組んでいる。
_ブロッコリーを栽培していた佐野さんは、黒すす病の頻発や全国的な生産量増加による価格低下を不安に感じていたとき、県内の業者から加工用作物の栽培を依頼された。キャベツは収量を上げるため、定植する株間を生食用より広い40㌢にして大玉の生産を図る。
_佐野さんは「加工用キャベツは契約単価での出荷なので、収量を確保すれば安定した収入が見込める。重量出荷だから選果の必要がないことにもメリットを感じた」と話す。
_2022年にJA徳島市の北井上カリフラワー部会を立ち上げ部会長を務める佐野さんは、中心作物のプラスアルファとして、カリフラワーの恒常的な出荷にも力を注ぐ。「その時々でいいと思うものを今後も柔軟に取り入れて、安定経営を目指したい」と意欲的だ。


キャベツは10㌃当たり8㌧の収穫量を見込む佐野さん

農業共済新聞(10月)を掲載しました

気象災害特例の新設に安堵
徳島県那賀町  飯島 好さん

_収入保険を知ったのは、ケイトウの栽培を始めた2019年、先輩農家の自宅で偶然その場に居合わせたNOSAI職員の話を聞いたときでした。農業収入の減少を補てんできるというほかにはない保険として、加入する考えが当時からあり、21年分補償から契約しました。コロナ禍や突然の異常気象のような不測の事態に備えるためにも、収入保険は私にとって必要不可欠です。
_就農当初は安定した収量と自分に合った営農スタイルを探すため、ケイトウ以外の栽培も試しました。収入保険は、そのような試行期間の失敗のリスクにも備えられます。
_21年には、栽培していたハボタンが、地域的に大量発生したコナガの幼虫の食害で全滅しましたが、保険金を受け取ったことで、損失は最小限に収まりました。ケイトウは価格や需要の変動幅が大きく、特にコロナ禍では市場が不安定な時期が続きましたが、収入保険に加入していることで強い安心感を得ながら営農できています。
_一方で、天候の影響を受けやすい露地栽培がメインの私にとって、近年の異常気象に対して収入保険だけでは拭えない不安がありました。天候による大損害の補てんを受けても、次年度の基準収入が大きく下がってしまうからです。しかし、甚大な気象災害を受けた年の収入金額を補正してくれる気象災害特例が来年新設されると聞いて、補償の拡充に今は安堵〈あんど〉しています。
_私が所属する相生ケイトウ部会では、担い手の高齢化と後継者不足が進んだこともあって、新規就農者を随時募集中です。地域活性化への足がかりとして、ケイトウ栽培が魅力的で努力が報われるなりわいになることを願っています。そのためにも、新規参入者には安定を見据えて収入保険への加入を勧めたいです。

農業共済新聞(8月)を掲載しました

風害に備え園芸施設共済加入
イチゴ良品出荷へ注力
鳴門市 坂本愛子さん

_兵庫県出身の坂本愛子さん(39)は、2018年に夫の地元の徳島県鳴門市へ移住。23年5月に新規就農し、ハウス3棟9㌃でイチゴ「紅ほっぺ」の栽培を始めた。
_栽培方法やパック詰めなどは4軒のイチゴ農家で学んだ。先輩農家の平山進次さんは「失敗を重ねて上手になる。よそをよく見て学ぶことを大切にしてほしい」と坂本さんの背中を押す。
_農業を始めるに当たり、鳴門市役所の担い手農地集積高度化促進事業を利用して借りた32㌃の農地に、県内の農家から譲り受けたハウスを建てた。ハウスは開けた土地にあり、風害が心配されるため園芸施設共済に加入。併せて、筋交いやタイバーなどの二重の備えも検討している。
_目標収穫量は約5㌧。今年は消費者に名前を知ってもらうため、全量を農産物直売所へ出荷する予定だ。12月の初出荷に向けて、現在は土壌作りや育苗などに力を注ぐ。坂本さんは「まずは販売実績をつくることが大切。今まで学んできたことを生かして、手に取ってもらえるようなおいしいイチゴを作りたい」と意気込む。

写真説明=9月の定植に向けて作業を進める坂本さん

農業共済新聞(7月)を掲載しました

備えて安心 園芸施設共済
いつ何が起こるか分からない
徳島県徳島市  西口 秀信さん
_高校卒業と同時に就農し、当初は両親とホウレンソウなどを栽培していましたが、乳牛を10数頭飼っていたので結婚後は妻と酪農業中心に移行しました。
_当時、両親に理解があり、月1回「休農日」というものを設け、子供と旅行に出かけることもできました。今思えば、その当時としては画期的な発想ではなかったかと思います。
_酪農を約10年営んだ後、イチゴ栽培を経て、園芸施設でのトマト栽培に転換しました。栽培方法は近所の方やJAの営農指導員のアドバイスを受けながら、一から手探りでのスタートでした。
_40年ほど前、トマト栽培のために秋に建てたばかりのハウスが、翌年の春の突風で倒壊しました。幸い、園芸施設共済に加入していたので、共済金で再建できました。
_昨年はハウスの被覆材が台風で被害に遭い、住宅の屋根部分も損傷しましたが、園芸施設共済、建物共済それぞれの共済金で修復することができました。農業は自然が相手で、いつ何が起こるか分からないので、農業保険へ加入していると安心して営農できます。
_就農して今年で六十数年たちますが、農業は水管理や肥培管理、防除も実際にやってみないと分からない部分が多く、さらに最近の異常気象などもあり条件が毎年変化するので、一年一年が勉強のつもりで続けています。また、農業と私生活の両立のため、以前の休農日のように、時間を見つけては妻とドライブや日帰り旅行へ出かけ余暇を過ごすようにしています。
_年齢のこともあるので規模拡大は難しいですが、消費者の皆さんが食べておいしいと思ってくれるような品質の良いトマト栽培を妻とともに続けていきたいです。

写真説明=秀信さん(左)と妻の光子〈みつこ〉さん(78)

農業共済新聞(6月)を掲載しました

良質の小麦で夢実現
おいしいパンを追求
吉野川市 吉野秀さん・真理子さん

_【徳島支局】「自然豊かな所で生きたい」という思いで吉野川市美郷に移住したのは、吉野秀さん(44)と妻の真理子さん(39)。夫婦で温めていた夢を実現し、2021年9月にパン店「moku moku note Bakery & Cafe」をオープンした。
_自然に近い農法で栽培された小麦を主に使い、全粒粉を多く配合したパンは薪窯〈まきがま〉で丁寧に焼き上げられ、奥深い香りや味わいを感じる。「酵母は自家製です。昔住んでいた町で作っていたときに比べ、自然あふれる美郷の水と空気のおかげで酵母菌がすごく活性化していると感じます」と吉野さん。
_店頭には、数種類の小麦の配合を変えて作る「杢〈もく〉」「玄〈くろ〉」の2種類を軸に、ナッツやベリーなどいろいろな素材を練り込んだパンが並ぶ。
_今年は小麦を提供してくれる農家が新たに増え、その小麦を使用したパンが秋ごろには味わえる見込み。吉野さんは「地元の農家さんが大事に育てた質の良い小麦を、おいしいパンにして消費者に届けます。おいしいパンをシンプルに追求し、純阿波産(100%徳島)を目指したい」と話す。

写真説明=自慢のパンを手にほほ笑む吉野さん夫妻

農業共済新聞(5月)を掲載しました

ハウススダチ 例年超える収量に
徳島県佐那河内村 森下嘉文さん
コロナ禍、燃料高騰、獣害……リスクに備え収入保険加入

_【徳島支局】2023年5月上旬、徳島県の特産品ハウススダチの出荷が佐那河内村で始まった。同村の森下嘉文さん(69)は、ハウス10㌃、露地40㌃を手がけ、ハウスは6月末まで、露地は8月下旬から9月末まで収穫し、JA徳島市を通じ全国へ出荷される。出荷が始まったハウススダチは、露地スダチと比べ果皮が薄めで果汁が多く、まろやかな酸味が特徴だ。

_森下さんのビニールハウスでは、12月末に被覆、その後は加温して温度を管理する。露地栽培は5月が開花期だが、ハウス栽培にすると2月に開花。開花期間中には通風換気を徹底し、防除に努める。
_「資材・燃料・薬剤などが高騰して、ものによっては1・5倍や2倍に価格が上がりました。秋から冬にかけて出荷する貯蔵スダチを含め、年間を通し消費者にスダチを届けるため、ハウス栽培は欠かせない方法です」と森下さん。
_20年のコロナ禍の際は、飲食店などの需要が減り、スダチの価格は5割ほどに落ち込んだ。
_「このような価格の減少は過去にはありませんでした。気候も変わり何が起こるか分からないため、もしものときの備えとして収入保険に加入しています。最近では露地栽培のスダチの新芽をシカに食べられ、収穫量が減り、木の枯死が見られます。この場合も一定の収入低下があれば補償してくれるので安心です」
_22年の収穫量は、不作により例年の4割程度となった。不作となったのは県内全域で、スダチを原料とする商品の販売を休止する企業があった。「何年も栽培していますが、初めての出来事でした。流通量が少ないため、消費者の手に届きにくい状況でした」
_森下さんは「今年のハウススダチは例年より量が多く、露地スダチは花が多いので昨年の倍以上の収穫量を見込んでいます。爽やかな食味をより多くの方に楽しんでいただきたいです。スダチが台所の脇役から主役になることを期待しています」と話す。

スダチはトゲがあるため長袖で収穫する森下さん JA徳島市での出荷作業。露地とハウス合わせて年間約13㌧のスダチを出荷する

農業共済新聞(4月)を掲載しました

軌道に乗る和牛繁殖・肥育
椿町ブランドつくりたい
阿南市 米山博城さん
_「偶然出合った1頭から和牛繁殖の道が開かれた」と話す米山博城〈よねやま・ひろき〉さん(45)。阿南市椿町で黒毛和牛を約80頭飼育する。
_県外の大学を卒業後、祖父の代から続く牧場を継ぐため椿町へ帰郷。2016年まではホルスタインを肥育していたが、枝肉価格に対して飼料・おがくず代が高く、経営の難しさを感じていた。
_そんなときに先輩の畜産農家から黒毛和牛の導入を勧められ、雌の和牛を1頭だけ購入。その雌牛が産んだ最初の黒毛和牛が、21年に食肉市場で優秀賞を取り、枝肉の価格や出来に手応えを感じ黒毛和牛の増頭を決意した。
_妻のふみさん(45)が家畜人工授精師の資格を持っていたことが幸いし、現在では繁殖用の黒毛和牛を17頭まで増頭。産まれた牛の肥育・出荷も軌道に乗っている。
_今後は母牛としての優秀な血統を研究・選別しながら飼育し、より品質の良い牛を出荷していきたいという米山さん。「いつかは地名を冠したブランド牛をつくり、自身の取り組みや過疎化の進む椿町の名を全国に発信していきたい」と話してくれた。

「大きく育ってほしい」と期待を込めて餌やりをする米山さん

農業共済新聞(3月)を更新しました

備えて安心 園芸施設共済
営農の早期再開に加入は不可欠
徳島県阿波市  阿部 正德さん
▽あべ・まさのり、72歳▽ハウス6棟18㌃(サツマイモ苗)、水稲(主食用米)50㌃、WCS(発酵粗飼料)用稲750㌃、キャベツ250㌃

_両親から家業を継ぎ、就農して50年になります。園芸施設共済制度がまだなかったころに、建設したばかりのハウスが強風で倒壊し、建て直すといったことがありました。自力で再建する大変さを痛感した経験が、園芸施設共済制度の実施後に加入を決めたきっかけです。
_園芸施設共済への加入に併せて、クロスタイバーや筋交いを設置して補強するなど、万一のための「二重の備え」で、安心感を持って営農を続けられています。
_施設を補強していても、近年頻発する大型台風などで被害を受けることはあります。一昨年の突風では、園芸施設本体に大きな被害を受けました。しかし、制度が改正され本体への補償がより充実していたおかげで、修理に対して十分な支払いを早急に受けることができました。
_24歳のとき農業派米研修に参加し、海外の大規模農業に触れることで大きな刺激を受けました。農業の効率化を目指し、販路の開拓や農地の集約、区画整理などで規模を拡大していく中で、農業機械を多く導入し機械化を図ってきました。
_農業機械の事故があったときに、農機具共済にも加入していたことで共済金の支払いを受けることができました。営農の早期再開のためにも、「備え」は必要不可欠だと感じました。
_効率化を進めた結果、作業時間と人手にゆとりが生まれました。その時間を使って作物栽培の研究ができ、品質の向上と安定した供給につながり、昔は人を雇っていた経営が今では親子3人で営農規模を維持できています。これからもできる限り長く家族で農業を続けていくことが私の目標です。

農業共済新聞(2月)を更新しました。

従業員が安心して働ける環境に
自社ブランドの販路拡大
鳴門市 旨味家ファーム㈱
_サツマイモ農家の3代目として家業を継いだ鳴門市大津町の村上真一郎さん(48)は、「旨味家ファーム株式会社」を2019年4月に設立。サツマイモ4㌶、ダイコン2㌶を作付ける。
_代表取締役の村上さんは、法人化することで社会への信用度が高まり、安定した雇用を確保するメリットがあると考えている。職場環境の改善に取り組み、「個人経営時には満足にできなかった就業条件の整備や福利厚生の充実に力を入れ、休暇制度を徹底しました。その結果、従業員が安心して働きに来てくれています」と話す。
_従業員が楽しく仕事ができるように、アイデアや意見を言い合える職場を心がけている。「従業員の一人一人の得意分野を生かすことが、会社の成長や利益につながると考えています。広報が得意な従業員のおかげで、SNS(交流サイト)や対面販売を利用した活動が可能になり、自社ブランド『旨味金時』を多方面へアピールできるようになりました」と話す。
_こうした取り組みで販路拡大に成功し、さらなる経営展開の計画を立てている。

「旨味金時はホームページ上のオンラインショップでも販売しています。ぜひ一度ご賞味ください」と村上さん(写真提供=旨味家ファーム)