醸造後の資源を有効利用 循環農業のロールモデルに

醸造後の資源を有効利用 循環農業のロールモデルに

徳島県上勝町  池添 亜希さん
__上勝町のクラフトビール醸造場「RISE&WIN Brewing Co.(ライズアンドウィンブルーイングカンパニー)」に勤める池添亜希さんは、醸造工程で発生する麦汁搾汁後のモルトかすを使って、2021年の冬にビール用の麦作りを始めた。
__同醸造場では年間6万㍑のビールを醸造する過程で、約2㌧のモルトかすが排出される。菓子やグラノーラへの再利用や地元農家の協力で発酵堆肥としてすべて活用し、町の理念であるごみゼロに積極的に取り組む。
__しかし、大量のモルトかすを運ぶ労力、発酵堆肥になるまでに要する期間の課題に直面し、解決策を6年間模索していた。
__転機は21年の夏、微生物の力で液体肥料になる機械の導入。工場から外部に運び出すことなく24時間で液体肥料となり、以前から課題となっていた労力と時間の削減に成功した。多種多様な菌やアミノ酸が豊富に含まれていることが検査会社の成分分析で判明し、野菜作りに活用した地元農家からは「いつもより甘くてえぐ味が少ない」と反響があった。
__池添さんは循環農業のロールモデル(行動や考え方の模範)の実現のため、液体肥料を活用したビール用麦や野菜を作る。
__「麦作りは初めてで、土地を開墾するところから液体肥料のまき方、種まきなど農業の基礎から地元の農家さんに教わっています。知り合いの農家さんへの相談で、また別の農家さんとの出会いにもなり、私たちの活動がいろんな方の交流の場となってくれるのはうれしいです。まずは麦が無事に収穫できることを目標にしています」と話してくれた。

写真説明=ビールに合わせた3種の麦を栽培する圃場で「畑地に向いていなかったこの土地も、液体肥料で土がふかふかになったんですよ」と池添さん