農業共済新聞(3月)を掲載しました

農業共済新聞(3月)を掲載しました

水稲育苗用培土80万箱分製造
地域農業の維持に貢献
徳島県阿南市 ㈲谷産業

_水稲育苗用の培土を約4千㌧製造する有限会社谷産業(阿南市長生町、代表・谷和紀さん=63歳)。出荷する育苗用培土は、JA東とくしま、JAアグリあなん、JAかいふ、JA板野郡のほか、個人で育苗をする農家へも卸す。水稲用だけではなく、野菜や花の育苗用培土も出荷している。

_育苗用培土を作るようになったのは、田植機の普及が始まった1970年ごろ。谷さんの父が育苗用培土を製造し、地元の育苗センターへ出荷したのが始まりだという。以降、製造業者が減少。現在は県南部では谷さんだけとなり、水稲育苗箱約80万箱分の培土を作るまでになった。
県内の育苗用培土は、山間地で取れる赤土を太陽光で自然乾燥させて製造するのが一般的。谷さんは赤土をローラーでつぶし、重油バーナーで加熱乾燥させるという工程を追加した。加熱乾燥させることで殺菌作用があるほか、倉庫内で作業するので天候に左右されず安定して供給できる利点がある。
_雑菌の繁殖を抑制するため、山から運んできた赤土は1年ごとに使いきり、翌年には新しい土から育苗用培土を製造。谷さんは「加熱殺菌工程を入れることで消毒回数を減らす効果が期待できる。土を手で直接触る農家の方に、より良い状態で触ってほしいという思いがあって、ずっとこの方法を採っている」と話す。
_育苗用培土の製造・出荷が終われば、谷さんは「農事組合法人ファームおおたに」の一員として水稲栽培を始める。同法人は、地域農業をしやすい環境づくりを理念に、2017年に設立。大型機械の共有や圃場整備、補助金申請などの事務整理、ドローン(小型無人機)を使用した農薬散布の効率化、農作業のノウハウの共有など、個人で農業を続ける際に課題となる点にフォーカスした活動に取り組む。
_地元用と県内各地の育苗用培土作り、法人の運営など、仕事は大がかりなものになったが、谷さんの根底にあるのは「地域のために役立ちたい」という思い。「いつまでも地元の、ひいては県内の農業が続いていくことを願っている」と話してくれた。

 

培土の品質を確認する谷さん 育苗用培土を製造する機械