安全・安心な米 銘酒の夢実現
徳島県阿波市 西田 賢二さん
ポット成苗を疎植 病害虫に強く倒伏軽減
_阿波市市場町の西田賢二さん(44)は、30歳で就農し、現在は約100筆の圃場で水稲8㌶、麦30㌃を栽培する。就農当初は、山間地で露地野菜を自然に近い農法で栽培していたが、獣害などで収量が取れなかった。2019年に平野部の農地を借りて穀物生産へ転向。栽培品種は「コシヒカリ」「ヒノヒカリ」「にこまる」のほか、古代米や酒造好適米、小麦、ライ麦など多岐にわたる。
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_水稲栽培への転向を決めた理由の一つは酒米造り。日本酒愛好家の会に所属する西田さんは、自分が栽培した米で日本酒を造ることがかねてからの夢だった。
_収穫した酒米は、蔵元で醸され「お殿田(おでんでん)」という銘酒に生まれ変わる。酒米の品種は「五百万石」や「山田錦」など毎年変えて、味わいの違いを楽しめるのが特徴だ。
_酒米栽培では化学合成農薬や除草剤を一切使わず、化学肥料も可能な限り使わない。農薬を使わず栽培する際に悩まされる病害虫対策は「みのるポット成苗移植システム(みのる式)」を導入。みのる式は丈15㌢まで育てた根鉢付きの成苗を疎植する。病害虫に強く、倒伏軽減の効果もあるという。さらに、田植え時に米ぬかをまき、土壌表面を酸欠状態にすることで雑草の出芽を抑制している。
_米作りを始めて、有機栽培や農薬使用を抑えた栽培の農産物への需要が高いと感じたという。「子どもがいるので、自分自身も食の安全性への関心は強い。全国的に有機学校給食の導入が広がっているが、自治体でそういった取り組みが始まればぜひ参画したい」と西田さん。
_「栽培には手間暇かかるが、価値を感じて購入してくれる人が多い。購入者からの声が励みになっている。来年は水稲の栽培面積を10㌶以上、酒米も増やしていきたい」と意気込む。
_西田さんの米は、生協の宅配「コープ自然派」、ふるさと納税返礼品での取り扱いのほか、写真共有サイト(インスタグラム)のダイレクトメッセージを通じた販売など、商品の特長を生かした販路を確立している。
写真説明=米笑(こめしょう)という屋号で営農に取り組む西田さん。「おいしいお米を食べて、毎日笑顔で健康に過ごしてほしい」という思いが込められている