素牛選び・飼料を重視、飼養管理を確立

素牛選び・飼料を重視、飼養管理を確立

__阿南市那賀川町の「のべ牧場」は、清く澄んだ空気と水、自然に恵まれた環境下で、無添加・無薬を心がけ飼育する黒毛和種肥育牛「阿波牛」を出荷。市場で高い評価を得るとともに、精肉の直営店「阿波牛の匠のべ」は開店と同時に整理券待ちの列ができるほどだ。代表を務めるのは延隆久〈のべ・たかひさ〉さん、約350頭の阿波牛を飼育し、全国100店舗以上の直売店に卸している。

__隆久さんの父・弘明〈ひろあき〉さんが「これからは畜産の時代になる」と、肥育用ホルスタイン5頭を飼育したところから牧場経営が始まったという。以降、地域の需要に合うよう品種を変え試行錯誤を重ねながら約180頭にまで増頭した。
__牛肉の売り上げを増やすため、他店よりも安価で提供することで店舗への客足は増えた。店で待つだけではなく、保冷車に商品を積み込み、缶詰工場や縫製工場など大勢の人がいる場所に、毎週のように営業をかけていった結果、売り上げは増え、それに伴い従業員も増えていった。
__しかし2001年、国内でBSE(牛海綿状脳症)が発生した影響で、売り上げが前年度の40~50%も減少。「肉屋を辞めようか、従業員に辞めてもらい夫婦で切り盛りしようか」と悩む日々が続いたという。
__「このままではいけない」と、店の経営に追われる時間が減ったことを利用し、子牛の導入に力を入れた。九州・中国地方の子牛市場に通い、系統、体つき、顔、毛並み、皮の張りなど、どういった牛が結果を出せるのか改めて勉強したという。
__自身で買い付け、飼育、販売した結果が実を結び、同時期に出荷した牛のほぼ100%がA4ランク以上を獲得。阿波牛と名乗る基準を満たしたことで、店舗の屋号を現在の「阿波牛の匠のべ」に変え、経営はさらに拡充していった。
__「自分の牧場と肥育スタイルに合った素牛(もと うし)を見極めて買うのが、一番重要で大きい責任。父から教わったノウハウを基に、飼料メーカーとともに飼料の種類や給餌のタイミングなどを試行錯誤の末に確立し、育て方を均一化できたことで、現在は300頭を超える牛を従業員に安心して任せられるようになりました。今は従業員が牛を育てやすい環境を整えることに気を配っています」

写真説明上=とくしま特選ブランドの認定証を手に隆久さん
写真説明下=「阿波牛の匠のべ」の開店前の行列